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ワイルドピッチとパスボールの違いを徹底解説 - 野球ルール完全ガイド

Author

Andrew Adams

Published Jul 23, 2026

ワイルドピッチとパスボールの違いを徹底解説 - 野球ルール完全ガイド

野球のキャッチャーとワイルドピッチ・パスボールの場面

野球観戦をしていると、実況アナウンサーが「ワイルドピッチ!」と叫ぶ瞬間がある。あるいは「パスボール!」と聞こえることもある。どちらもキャッチャーがボールを後ろに逸らした場面なのに、なぜ呼び名が変わるのか。この疑問を持ったことがある人は多いはずだ。実は、この二つの記録は野球のルールブックで明確に区別されており、責任の所在も、試合の記録への影響も、まったく異なる。

初心者からベテランのスコアラーまで、多くの人が混乱するポイントだ。この記事では、ワイルドピッチとパスボールの定義、見分け方、自責点への影響、さらに判定の難しさまで、すべて丁寧に解き明かしていく。

ワイルドピッチ(暴投)とは何か

ワイルドピッチを日本語で表現すると「暴投」という漢字表記になる。ただし、内野手や外野手が送球をそらした場合は「悪送球」と呼び、ワイルドピッチとは区別されている。投手からキャッチャーへの投球だけに適用される記録だ。

公認野球規則によれば、公式記録員は、合法的に投じられたボールが非常に高く、非常に広く、または非常に低いため、捕手が通常の努力ではボールを止めてコントロールできず、その結果走者が進塁したときに投手へワイルドピッチを記録する。さらに、投球がキャッチャーに届く前に地面またはホームプレートに触れ、捕手が処理できなかった結果走者が進塁した場合にも、ワイルドピッチが記録される。

ワイルドピッチは暴投とも呼ばれ、ストライクゾーンから大きくボールが逸れたり、ワンバウンドするなど、捕手が取るのが難しいボールが対象となる。フォークボール等、ワンバウンドする変化球で三振を狙いに行く投手はワイルドピッチが増加する傾向にある。

パスボール(捕逸)とは何か

パスボールは日本語では「捕逸」と書く。その字から想像できる通り、捕手がボールを逸らしてしまうことだ。ワイルドピッチと見た目は似ているが、根本的な違いがある。

野球において、捕手は合法的に投じられたボールを通常の努力で保持できたはずなのにコントロールを失い、その結果打者または塁上の走者が進塁した場合にパスボールが記録される。

取れるはずのコースのボールを捕手が後ろにそらした場合に記録されるのがパスボールで、実質的に捕手のエラーといえる。一方で注意が必要なのは、パスボールは野手に記録されるエラー(失策)とは別のものとして記録されるため、エラー数には含まれないという点だ。見た目はエラーのように見えても、統計上の扱いが異なる。

キャッチャーがワンバウンドボールをブロックする場面

ワイルドピッチとパスボールの核心的な違い

シンプルにまとめると、パスボールは「捕れるボールを捕れなかった」ためキャッチャーのエラーであり、ワイルドピッチは「捕れないボールを投げた」ためピッチャーのエラーだ。この責任の所在こそが、二つの記録を分ける唯一にして最大の違いといってよい。

パスボールは捕手の責任とみなされ、ワイルドピッチは投手の責任とみなされる。しかし実際の現場では、この境界線が非常に曖昧になることも少なくない。

たとえばフォークボールのようにバウンドを意図したボール球の場合、投手は最初からワンバウンドを狙っているため、厳密には「捕れない球を意図的に投げた」ともいえる。それでも記録上はワイルドピッチになる。実際は必ずしも「パスボール=捕手が悪い」「ワイルドピッチ=投手が悪い」という訳ではないため、注意が必要だ。

ワンバウンド投球はどちらになるのか

多くのファンが迷う場面のひとつが「ワンバウンド投球」だ。キャッチャーが後ろに逸らしたとき、ワイルドピッチなのかパスボールなのか。

ピッチャーの暴投であることから、ワンバウンドの投球を後逸してしまった場合はワイルドピッチと判定されることが多い。パスボールはキャッチャーの捕球ミスとなるため、ノーバウンドの投球を後逸した場合はパスボールと判定されることが多い。

ひとつの明確な基準として、キャッチャーに届く前にボールが地面に触れた場合は常にワイルドピッチとされる。ただし、ワンバウンドであっても十分に捕球可能なコースであれば、記録員の判断によってパスボールとなるケースもある。ここが判定の難しさを生む部分だ。

記録が付く条件 - ランナーの進塁が必須

見落としがちな重要ポイントがある。ワイルドピッチもパスボールも、いつでも記録されるわけではない。

パスボールもワイルドピッチもランナーがいない状況なら記録されない。塁上にランナーがいても進塁されなかったら記録は残らない。どれほど派手にボールが後ろへ転がっても、走者が進塁しなければ記録簿には何も残らない。

ディフェンス側が、走者が進塁する前にアウトを取った場合、ワイルドピッチもパスボールも記録されない。たとえば、一塁走者がいる状況で投球がバウンドして捕手をすり抜けたが、捕手がボールを素早く回収して二塁へ送球し走者をアウトにした場合、投手にワイルドピッチは記録されない。

ただし例外が一つある。振り逃げで打者が出塁した場合は、パスボールやワイルドピッチもランナーなしの状態でも記録される。これが少し複雑なルールの見せどころだ。

自責点(ERA)への影響はどう違うのか

野球のスコアボードと自責点の計算

ワイルドピッチとパスボールの最も実質的な差が表れるのが、投手の自責点(ERA)の計算だ。

ワイルドピッチはピッチャーの自責点になる。ワイルドピッチによって得点が生まれた場合、それは自責点として記録される。つまり、投手の防御率に直接ダメージを与える。

一方、パスボールは話が違う。パスボールはエラーとして記録されないが、パスボールによって得点が生まれた場合、それは投手に対する自責点にはならない。捕手に責任があるため、投手のERAは守られる。

つまり、同じように見えるプレーでも、ワイルドピッチなら投手の防御率が悪化し、パスボールなら防御率は影響を受けない。スコアラーや監督がこの判定にこだわる理由がよくわかる。

振り逃げとの関係 - 第3ストライクが絡む特殊ケース

第3ストライクがワイルドピッチとなり打者が一塁に生きた場合、公式記録員は三振とワイルドピッチを記録する。第3ストライクがパスボールとなり打者が一塁に生きた場合は、三振とパスボールが記録される。

この振り逃げのケースは、記録としても自責点の計算においても重要な意味を持つ。ワイルドピッチの場合は自責点が投手に帰属するため、パスボールの場合と投手への影響がまったく異なる。同じ「捕れなかった第3ストライク」でも、それが暴投か捕逸かで、試合後の成績表が大きく変わってしまうのだ。

誰が判定するのか - 公式記録員の役割

ワイルドピッチとパスボールの判定は審判員ではなく、公式記録員が行う。ヒットやエラーの記録を判断するのも公式記録員だ。

野球の多くの統計と同様に、捕手をすり抜けた投球をワイルドピッチとするかパスボールとするかは、公式記録員の裁量に委ねられている。不明確な場合は通常、捕手に疑いの余地が与えられるため、ほとんどのケースはワイルドピッチとして記録される。

パスボールかワイルドピッチかの判断は、記録員の主観的な評価が大きく関わる。判断の材料となるのは投球の質と捕手の動きで、こうした判断は一瞬のプレーでなされるため、試合後にリプレーを見返しても議論になることがある。

スコアブックへの記載方法

スコアラーとして記録をつける場合、ワイルドピッチは「WP」、パスボールは「PB」と略記する。ワイルドピッチは投手の統計カテゴリーとして(WP)で記録されるが、エラーとしては記録されない。

スコアブック上では、ランナーの進塁経路を示す際にこれらの記号を使用する。たとえば一塁ランナーが二塁へ進んだ場合、WPまたはPBとともにその進塁が記録される。少年野球から高校野球、プロ野球まで、記録の基本は共通している。

ワイルドピッチを防ぐキャッチャーの重要性

土の上で低いボールをブロックするキャッチャー

いかにワイルドピッチを止めることができるかが捕手の力量といっても過言ではない。どんなボールでも止める捕手こそ、投手の信頼を得られ、投手の力を引き出すことができる。

ときに投球は意図的にダートで跳ねるよう設計されており、打者に膝元でストライクゾーンを横切ると思わせ地面に突き刺さることで惑わせる目的がある。これはキャッチャーにとって、野球をブロックしてワイルドピッチを防ぐ負担を課す。

ワイルドピッチは記録上は投手の責任となるが、ワンバウンドなど捕手の手が届く範囲の投球は止めてあげたいところだ。捕手のブロッキング技術こそ、バッテリー全体の失点を減らすカギとなる。

プロ野球における記録の実態

過去のシーズン最高記録は両リーグともに「17」だ。年々野球レベルが向上していることがパスボールの記録推移から推察できる。ワイルドピッチ数の減少からも投手レベルの向上がうかがえる。

NPBにおけるこれらの数字は年々減少傾向にあり、現代の捕手と投手の技術水準の高さを示している。2016年にはオリックスが史上初の「シーズンチーム捕逸0」を達成している。これはプロ野球史に残る驚異的な記録だ。

メジャーリーグに目を向けると、ノーラン・ライアンが27年のMLBキャリアで277個のワイルドピッチを記録し、現代野球における最多記録保持者となっている。彼はシーズン最多記録でも6度リーグを制した。

ワイルドピッチとパスボールをひとまとめに見るとき

ワイルドピッチとパスボールは、キャッチャーが投球を捕ることができずランナーが進塁する点で同じだ。二つを総称して「バッテリーエラー」として表現することもある。

ユース、高校、MLBを問わず、パスボールとワイルドピッチの判定は野球において最も誤解されやすいスコアリング判定のひとつだ。スタンドの保護者たちが議論し、コーチたちがぼやく。そして多くの人が思う以上に重要な意味を持っている。それが投手のERA、捕手の成績、そして得点がどのように記録されるかに影響するからだ。

まとめ - 二つの記録が示すバッテリーの真実

ワイルドピッチとパスボール。この二つは見た目がそっくりでも、記録の世界では完全に別物だ。投手の責任か、捕手の責任か。その一点が、防御率の明暗を分け、試合の記録を変え、時には勝負の行方にさえ影響を与える。

野球観戦の際には、キャッチャーがボールを後ろに逸らした瞬間、「あれはワンバウンドだったか」「捕れるコースだったか」と観察してみると面白い。記録員が一瞬で下す判断の重さが、じわりと伝わってくるはずだ。ルールの細部を知ることが、この競技をより深く楽しむための入口になる。